【ジェンツーペンギン】 南極/Antarctica
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南極トピックス


                              - 2009,03,13 -


 ◆沿岸捕鯨再開案 対立超えて歩み寄りを

 20年以上も途絶えている沿岸捕鯨の本格的な再開なるか。ローマで開かれていた国際捕鯨委員会(IWC)の中間会合は、日本の沿岸捕鯨の再開容認と調査捕鯨の縮小・廃止を盛り込んだ作業部会最終案をまとめることにした。

 クジラは食料資源か、それとも保護すべき動物か。IWCを舞台に捕鯨支持国と反捕鯨国の対立が長年続いてきた。条件付きとはいえ、日本沿岸で大型鯨類であるミンククジラの捕獲に向けた議論を始めた意義は大きい。日本政府は反捕鯨国と対話に努め、妥協点を探っていくべきだ。

 国際世論に押されて日本が商業捕鯨から撤退したのは1988年。その後は、資源調査などを目的とした南極海での調査捕鯨に転じ、沿岸では規制対象外であるゴンドウクジラなどの小型鯨類しか捕ることができなくなった。毎年の総会で沿岸捕鯨の本格再開を求めてきたが、数で勝る反捕鯨国の壁に阻まれた。

 今回、ホガース議長が示した案は、和歌山県太地町、北海道網走市など国内4港をそれぞれ拠点とする小型捕鯨船が日帰りでミンククジラを捕ることを、とりあえず5年間認める。捕獲枠は今後詰めるとしている。

 その一方で「調査に名を借りた商業捕鯨」と反捕鯨国が批判する調査捕鯨については(1)5年間で段階的に廃止する(2)捕獲数を減らし5年間継続する―の両案を併記している。

 沿岸捕鯨の再開案は、日本の主張を一定程度、取り入れた内容といえよう。日本沿岸を含む北西太平洋でのミンククジラの資源量は約25000頭と推定されている。捕獲をやめたこともあって、近年増える傾向にある。

 もし本格的に沿岸で捕鯨が再開されれば、後継者不足などで存続が危ぶまれている地域の捕鯨文化の継承にも役立つだろう。ただ産業として成り立たせるためには、高値取引が見込めるミンククジラの捕獲枠をどれだけ確保できるかが鍵を握っている。

 問題は、調査捕鯨の縮小・廃止案に日本がどう対応するかだ。ローマの作業部会では、調査捕鯨の廃止は受け入れられないと表明しているが、捕獲頭数の削減は避けられないだろう。調査捕鯨枠はミンク、ナガスクジラなど年間1300頭。しかし公海上での捕鯨に対する環境団体の妨害などによって、2007年度の捕獲実績は約850頭にとどまっている。

 IWC加盟国は現在、反捕鯨国46カ国に対し、捕鯨支持国はやや増えたものの38カ国と拮抗(きっこう)している。事実上、機能不全に陥っている現状を立て直すことが、議長の狙いでもあろう。

 作業部会は最終案を5月中旬にまとめ、6月の総会に提出する予定だ。反捕鯨国や環境団体の中には「議長案は日本寄りだ」との見方もあり、合意達成は容易でなかろう。日本政府は譲るべきところは譲り、南極海から沿岸へと徐々にシフトしていくことも検討すべきではないか。

(C) 社説/中国新聞

[03/13] 


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