地球上でこの島だけに暮らすスネアーズペンギン。昆布が生い茂る海を好み、100メートルもの岩壁をよじ登って、巣まで通う

あかね色のサンライズとともに、船は穏やかな島の入り江、コモン・ベイに錨を下ろした。
「あー無事でよかった」と、思わずみんなで肩を抱きあっていた。
ニュージーランド南端から、ちょうど209キロメートル。
南西方向に航海を続け、やっとのことでスネアーズ島に到着した。僕も含めほとんどの人は昨夜、一睡もできなかったはず。
枕元に置かれた洗面器だけが頼りだった。
南緯40度での航海は、けっして優雅なクルージングとはいかなかった。
この海域は「吠える40度」と呼ばれ、モンスターのようなうねりと吹きすさぶ強風が、船を木の葉のように扱う。
きっと今までに、数えきれないほどの船と人を、この海はのみ込んできたはずだ。
スネアーズ島は、まさに絶海の孤島であった。


「吠える40度」と呼ばれる暴風海域にあるスネアーズ島。
荒れ狂う海が、孤島で暮らす生き物たちに、試練と恵みを与えている

2つの大きな岩礁からなるこの島の面積は、わずかに243ヘクタールほど。
だが、島は小さいながらも、珍しい動植物で満ちあふれている。
島には固有のペンギンがいて、その名もスネアーズペンギン。
推定生息数66000。
「ペンギンで島が沈んじゃうよ」と思ってしまうほど、島のいたるところにいる。
だが、島が小さいが故に、ほとんどの生き物たちは常に絶滅の危険にさらされているのだ。


1791年11月に、島は帆船ディスカバリー号の指揮官バンクーバーによって発見された。
彼はアメリカ北西沿岸の探検を終えた後、未知なる南極海の調査中であった。

それ以来、人間が訪れるようになり、島の自然は急速に破壊されていくことになる。
発見からわずか20年、島のすべてのオットセイから毛皮が剥ぎ取られた。
ペンギンは年がら年中、陸で暮らしているわけではない。スネアーズペンギンは一年の半分以上を、島から離れて海で生活している

寿命は20年ほどで、夫婦は一生をともにするといわれている

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