サウスジョージア島

〜日本人のようなペンギンたち〜


海岸から内陸へ1.5キロメートル。
平らなモレーン(氷河堆石)上に桃源郷があった。


氷河の水で体を洗い、清流を伝って海に出かけていくキングペンギンたち。
「おはよう」とばかりに、カップルたちはデュエットを奏で、渓谷にエコーが響きわたる。
数十万羽を越えるキングペンギンが、南米沖の南極海に浮かぶ孤島、サウスジョージア島で、夏を謳歌していた。


もしかすると、この地球上で、背骨が垂直でいつも直立二足歩行している生き物は、人間とペンギンだけかもしれない。
「撮影のじゃまをしないでくれよ」と僕がいくら嘆願しても「ペンギンの耳に念仏」。
ペンギンは威風堂々と、まったく恐れた様子をみせない。
大胆不敵なやつらである。
じっさい、サウスジョージア島で腹ばいにレンズを構えていると、ペンギンたちはジャケットの背中についているファスナーやポケットを、盛んにくちばしでつついてくる。
さらに、レンズを向けると、レンズに移っている自分の姿にすごく興味を示したようで、レンズをつつき始めた。
きっとキングペンギンたちは、自分たちと同じ二足歩行する人間を親しい仲間だと思っているのだ。

後ろにいる親たちとは、似ても似つかないキングペンギンのヒナ。18世紀まで、親と子は別種と思われていた
山の麓で、約ひと月もの間、ペンギンは絶食に耐えながら、新しい羽が生えてくるのをじっと待つ
一見、井戸端会議ふう。実は、フリッパー(翼)とくちばしを上げ、相手ににらみをきかせているらしい
ペンギンたちはいつも日本人と同じようなことをしている。
「おーきに」
「ほな、気ぃつけてや」
「さいなら」
などと言っているかどうかは定かではないが、しょっちゅう“おじぎ”をしあっている。
キスのようにくちばしをぶつけあったりしていることもある。
そんな様子を見ていると、ますます人間にみえてくるところが不思議である。



キングペンギンは偉大なるダイバーだ。餌を求めて水深300メートル以上も潜っていく


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