タスマニアからヨットで5日目。
ようやく水平線に島影らしきものが見えてきた。
「地の果てとはこのことか。ずいぶんと遠くへ来てしまったものだ」
とつぶやいても、南極大陸へはここからさらに五日の航海が必要だ。


オーストラリア領マックオリー島。
島は南極海のど真ん中にあった。
細長い島は34キロもの長さがあり、幅はいちばん太いところでも5キロほど。
僕たちにとって最悪だったのは、船が安心して停泊できる場所がみつからなかったことだ。
島の海岸線はほとんど直線的で、穏やかな入り江がまったく見当たらなかった。
さらに最悪なのは天気で、年間10日間ぐらいしか晴れないだろうといわれていたのだが、案の定、滞在している間はずっと雨ばかり。


島にはおびただしい数のペンギンがいた。
海と丘を忙しそうに行き来していた。
砂浜では体重が3トンもあるミナミゾウアザラシたちが気持ちよさそうに寝そべっていた。
ロイヤルペンギンの繁殖コロニーは57ヵ所で見つかっていて、島全体で85万つがいが暮らしている。


1810年にオットセイ狩りの船が島を発見して以来、100年以上もの長い間、島では殺戮の時代が続いた。
最初の標的はオットセイの毛皮にむけられ、40万頭いたと思われるオットセイは、10年以内にすべて殺されてしまった。
次なる標的は当時高値で取引きされたゾウアザラシの油。
そのうちゾウアザラシも減り、最後の標的となったのがペンギンであった。
1905年がペンギン油生産のピークで、プラントで1回に2000羽ものペンギンが処理された。そして、1羽のペンギンから約500ミリリットルもの油が取れたという。


錆びついてはいるが当時のままのペンギン釜が、島のあちこちに今でも残っている。
島の中腹にあるロイヤルペンギンの巨大な営巣地。
約50万羽のつがいが子育て中
ロイヤルペンギンは体長70センチほどで、体重は約5キロ。
島固有のペンギンで5月に島をいったん離れ、
9月にはまた島に戻ってくる。
島を離れてどこに行っているのかは、
いまだに解明されていない
海岸で寝そべっているミナミゾウアザラシ。
アザラシの仲間では最大で、
この若いオスたちでも体重が優に3トンを超える。
時折「ブヒー」と鼻いびきをする。
吐き出された息はとっても臭く、
「君たち、たまには歯を磨けよ!」と言いたくなるほど

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