「めったに行けない島に船が向かうらしいぞ」
と外国の友人が教えてくれて、僕はその船に飛び乗った。
ニュージーランドの南端から南極海を南東に872キロ。
「南極海で最も孤独な島」とよばれるアンティピティーズ諸島。無人島である諸島は南極海で孤立した場所にある。
昔からめったに立ち寄る船はなく、数年に1度、研究者がヨットをチャーターして訪れる程度という。
しかも現在は島を保護するために、ニュージーランド政府は許可を受けた人以外の島への上陸を禁止している。


面積20平方キロほどの島の頂からは、何本もの滝が海に流れ落ちていた。
2メートルにも生長するシダを除けば、木とよべるものは諸島でみあたらない。
だが、地球上でここでしかいない植物が何種も見つかっている。
さらに、何百万羽もの海鳥が繁殖する楽園でもあった。

諸島でいちばんに目につくのがマユダチペンギン。
70センチに届きそうな体長はペンギンのなかでもかなり大型。目の上に直立した黄金色の冠羽を持つ。
その光り輝く眉は、威厳のある王冠のようにみえた。


乗船していた英国人が
「まるでロンドンのパンクファッションだね」と。


南極海のほとんどの島々はかつて人間の進入をうけ、生態系に大打撃をうけた。
特に島に持ち込まれた植物や動物の害は、今なお深刻である。


アンティピティーズ諸島は人間の害を奇跡的に免れた、まさに原生の姿を残す「孤高の島」であった。
島の頂から流れ落ちる滝。
切り立った崖で子育てに忙しいマユダチペンギン
「南極海で最も孤独な島」とよばれる諸島。
人間による破壊から免れ、
この無人島はずっと昔のままの自然を保ち続けている

オットセイのわきをすり抜け、海へ出かけるマユダチペンギン。
目の上の直立した黄金色の冠羽を、ときおり上下に動かす。
まるで乱れた髪を整えているかのようで、
とてもおしゃれなペンギンである

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